魔術師達と入学試験

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再び暦表へと視線を移す。 「そして、二六一七年、二月。地上に暮らす国々は日本だけが独自に持つ戦力、魔術の独占を許す訳がなく、地上の代表であるアメリカ及びヨーロッパ諸国の大統領を乗せた航空船が空中浮遊都市・日本へと上陸を開始した。上陸した大統領達は当時の日本総理大臣に会談を申し込んだらしい」 らしい、と言う言葉に皆が反応する。 「この会談自体はあったけれど、それに関する事が全く伝えられていないの。続けるわ」 ……この会談で何が起こったのだろうか。私が彼らに伝えられる事は無いわね。 ユリアナは感じ、言葉を続ける。 「平和主義を謳う当時の総理は、この会談を直ぐに承認し、約一時間に及ぶ総理及び大統領のみでの会談が行われた。会談終了後、総理は他国の権力者と共に《日本分割》の提案を進めた。日本分割、それは日本が所有している領地を他国に明け渡すという事だった。結果、日本の領地は北海道のみとなり、東北はアジア諸国、関東はアメリカ、中部及び近畿はヨーロッパ諸国、中国は南アメリカ諸国、四国はオーストラリア、九州はアフリカ諸国が領地をもつようになっていった」 その場にいたユリアナと佐奈を除く四人は日本人である佐奈から顔を背け、ユリアナは佐奈に同情の視線を向けた。 「二六二〇年になると、地上から何千人にも及ぶ多民族が空中浮遊都市・日本へと移住を完了していた。日本人は北海道に移住を開始する者とその場で暮らす者と二つに別れていった」 ……日本人が住みにくい世界になったものね。 ユリアナは佐奈と目が合いそうになり、視線を暦表へと移した。
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