魔術師達と入学試験

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しかし、一つの災害の跡がくっきりと複雑クレーターとして日本にある。 欧州中央都市パリと呼ばれている旧静岡県であるそこには昔、日本最高峰である富士山があった。が、今現在そこには富士山の跡形も無く、巨大な複雑クレーターがその存在を誇示している。 そして、そこには一つの人影があった。 姿形は人間だ。 十六歳程の黒髪の少年である。 その少年は光り輝く太陽の光を遮断するようにマントを纏っていた。 纏うマントは黒く、北から吹く風により乱雑な動きを見せている。 艶やかで綺麗な短髪の黒髪は風に静かに揺れ、一重まぶたの大きな瞳は空を見据えていた。 「そろそろだな」 少年は呟き、マントの裾からそっと左腕を出す。 出した左腕は非常に筋肉質で、小麦色のベルトを上腕に巻き付けており、前腕にデジタル時計なるものが装着されていた。しかし、電池が入っていないのか時計の液晶パネルには何も表示されていない。そこにはただ暗転した画面が表示されているだけだ。 直ぐに少年は腕時計の右側部にあるプッシュボタンを押した。 ポチッという動作音と共に時計から機械音が鳴り響く。 やがて、時計の液晶パネルは眩く光り輝き、少年の前に表示枠が現れた。表示部分である空白部に、 『オペレーション・スタート。タイムバースト発動シーケンス・スタンバイ』 黒色で表示された文字列が全て表示されるのを確認すると、表示枠と共に時計の中に消えていった。 その瞬間、少年の左手の平に百文字程度の楔形文字によって構成された六芒星型魔法陣が真紅に光輝きながら出現した。 魔法陣の大きさは半径五センチ程度の小さなもの。真っ赤に光り輝く楔形文字は隙間なく重ね合わせられ、一つの集合体として六芒星型に形作っている。
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