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佐奈が頭を上げると同時にユリアナは次を読み上げる。限られている試験時間の中であまり無駄話をする時間がないのだ。
「魔術アカデミー成績第三位、ジョン・シチュアート」
面倒そうに何度も頭を掻く少年がゆったりと前に出た。ナマケモノにでも遭遇したようだ。こんな男が魔術アカデミー成績第三位だとは誰も思うまい。
「うぃーす。俺っちの名前は、ジョン・シチュアートと言うっす。宜しくっす」
ラフな格好をした白人のジョンは不恰好に小さく頭を下げる。頭の下げ方から挨拶まできちんと教えてやらないと、そう思う。
「はい、よろしく。試験に合格したら取り敢えず説教決定だから、まぁ頑張りなさい」
「うぃーす」
礼儀の知らない返事だ。その場にいたジョン以外の全員は呆れていた。
「じゃあ、次の人は……」
視線を手元の資料へと移す。
ユリアナが次の言葉を発する前に答えが返ってきた。
「Yes、私です。リシェル・シュナイドと言います。今回は試験監督をボコボコにして良いと聞いていますので、手加減なしで試験を受けさせて頂きます」
手を勢いよく挙げる身長一五〇センチ程度のポニーテールの少女がそこにはいた。彼女は本気で魔術を使って良い事に喜びを感じているのか、にっこりと笑っている。
その時、ユリアナは思った。厄介な子が来たわね、と。
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