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「誕生日おめでとう……十一歳よね?」
「うん」
母はその言葉に満足そうに頷くと、自分の食事に手を付ける。
シレネは母の横顔を見ながら、ふと思ったことを呟いた。
「お父さんもいれば良かったんだけどね」
「そうねぇ…」
母はその言葉に少し顔を上げ、そして頷いた。
今、父は王都に居る。
何の仕事をしているのかは知らないが、時々帰って暫く一緒に過ごしては、また王都に行っている。
何の仕事をしているのか聞いてみたことがあるが、言っても分からないよ、と言われてしまった。
母にも聞いてみたが、同じく。
その言葉に少し心配になり、危ない仕事なのかと尋ねると、母は笑いながら、そんなものじゃないわよ、と言った。
そこから、他愛のない会話をし、食べ終えた。
そして、普段通りお風呂に入り、歯を磨いて寝た。
いつも通りの、日常だった。
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