[プロローグ]『ちょっとした昔話をします』

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昔々……と言う程昔じゃない昔、1人のお金持ちの青年がいた。 詳しくは知らないけど、容姿端麗で頭も良く運動神経抜群な人だったらしい。 お金持ちだから、家も当然デカい。だから青年には5人の専属メイドがいたんだとさ。 だがなんとその5人のメイドは、そんな完璧な青年に、全員恋をしてしまったみたいなんだ。仕えるメイドが主人に恋をするなんてことは、タブーだ。 しかもモテモテな青年には……超絶美人な許婚がいたみたいだから、メイド達は心の奥底に好意を隠し、苦悩しながら日々を過ごしていた。 だがある時、青年はメイド達を全員集合させてこう言ったらしい。 「僕はみんなの事を愛している。だから結婚しよう」 ……なに言ってんだこいつ?ってなると思う。俺も思います。 メイド達はみんな困惑状態になったんだと。 それもそうだろ。急にこんな事言われたら、誰だって困るさ。 「大丈夫だよ。許婚も父上も母上からも許可は得た。……僕は本当に、みんなの事をそれぞれ個人として愛しているんだ。だから結婚しよう!」 そんなメイド達の事は気にせず、青年は演説でもするかのようにこう言った。 だんだんとメイド達も自分の思いを正直にさせ、泣いて喜んだ。 メイド同士仲が良かったし、主人と結婚できるなら一夫多妻でも全然構わなかったんだってさ。……あ、もちろん青年は許婚とも結婚しました。 こうして、青年には6人の妻ができました。 だけど普通、法律上無理ですよね?こんなの。江戸時代じゃないんだし。 そんな普通の考え方をする常識ある素晴らしい方々の皆さん。 もちろん青年は抜かりありません。 何をしたのか分かりませんが……青年は、『自分だけは一夫多妻しても構わないと国から許可』を得ました。 ……馬鹿だよね、ホント……。 そんな馬鹿げた事をやってのけた青年は、6人の妻と共に幸せに暮らしましたとさ。……めでたしめでたし。 ……ん、青年は何者なんだって? ――俺の親父です。
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