友と兄貴分と時々巫女と

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龍香との組手をし続け、気がつくと19時になっていた。 練習は暗くなったので今日は終了になった。 この後、俺は街の見回りがある。 これは立派な公務で、俺たちは交代で街を見回っている。 勿論式神を連れて行く。 ただ、今日のお供はルナだけである。 氷華は夕食作り、龍香は晩酌だとか何とか言って来なかった。 ルナは何故かいつも来たがるので連れて行ってる。 春口、殆ど悪霊がいない時期なので見回りに意味はない。 何故なら、彼岸でも人が死にやすいイベントがある夏でも冬でも無いからである。 死んだ幽霊の集合場所となってる恐山は、他の霊場よりかは例は多いものの春はかなり霊の数は少なくなるのである。 多少地縛霊や妖怪はいるが、誰も人間に危害を加えない。 ここにいる妖怪の本当の姿は人間だったし、地縛霊も人間の霊だからである。 人間の霊が人間を襲う事は恨みを持っていない限り殆どない。 よっぽど精神の病んだ霊でなければやらないのである。 だから襲うのは、生まれつきの妖怪と言う事になる。 比較的強力な妖怪は、生まれつきの妖怪が多い。 俺の式では龍香や氷華が生まれつきの妖怪である。 ルナは前言ったとおり、吸血鬼の処女の生き血好みの吸血で出来た可哀想な被害者吸血鬼なのである。 ……だが、なんとルナはまだ人間の部分が残った半人半吸血鬼なのである。 理性と剛力が顕在するルナは強いのだ。 そもそも、彼女の本来の目的は人間に戻る事であり、俺の使役として働く事では無いのである。 その彼女が何故この見回りにくるのかというと、ここに居る最古参の妖怪の亀婆さんに戻りかたを聞く為である。
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