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亀婆さんとはゼニガメが矢鱈と長生きして化けた妖怪である。
長生きした分妖怪の術に長け、戻しかたを知っているらしいのである。
もっとも、彼女は長生きし過ぎてその方法をすっかり忘れてしまったようだが。
だから俺たちは見回りの時に毎回思い出したかを聞きに行くのである。
今日も見回りに行く為、無断で正人さんのチャリをかっぱらって街に繰り出した。
街の中をスイスイ漕いで行く。
ルナは背中の羽をパタパタさせ、飛びながらついて来た。
式神は基本見えない。
修行を積んだ陰陽師か、巫女。生まれつきの霊能者は見る事が出来る。
でも、一般人に見えない訳でも無い。
式神自体の妖力の段階を自らあげてもらうか、陰陽師自体が視覚の術を使って見えるようにする事もできる。
だからって見せたら大問題になるのは必至なのでやらない。第一疲れるし。
しばらく漕いで行くと、住宅街を過ぎ、寂れた誰も歩いていない商店街に出る。
電灯が映す錆びた広告。シャッターの降りた道をただただ通り抜ける。
スピードは上げないでゆっくり走る。
ルナに合わせて走っていると、不意に
「おーいっ!ルナちゃんだ!!」
「いやーっ!今日も可愛いね。」
「久慈の陰陽師もこんばんわ~。」
フードをかぶった集団に声をかけられた。
「こんばんわ~、旧鼠さん達。」
にこやかな笑顔を向けるルナ。
彼らはヒューだの、俺の目を見てくれただの、いや違う俺だだの、まあ、どっちでもいいから可愛いなぁとかお祭り状態である。
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