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「おーい!亀婆さん。何か思い出したかい?」
家に早く帰りたいので、道から見下ろしながら問う。
「おお、遼くんだべ。ルナちゃんも。ルナちゃんめんこいのお。」
ルナは嬉しそうにほくそ笑みながら亀婆さんを見た。
「えへへ。こんばんわ~、何か思い出しました?」
「済まねえな、まだ何も思い出してねぇべよ。その代わりだけぇ、いい情報があるべよ。」
頭の白髪を掻きながら俺らを見上げる。
「いい情報って?」
亀婆さんはさも得意そうに語り出した。
「ワシの予知夢が示してるけぇ確かだべよ。
この頃ここらに腕利きの流れ者が来たようだべよ。
必ず騒動を起こすような危険なやつだけぇ、用心しとくべよ。」
俺はげんなりとした。
彼女は妖怪の能力として予知夢がある。
その予知夢は百発百中、必ず当たると有名である。
当たると言う事は、必ず被害が出て、俺たちの仕事が増えると言う事だ。
めんどっちいな~。
「で、どんな奴だった?」
「よく姿を変えてたけぇ、本物がどれかは分からないけど、人を狙って夢に入り込んでるようだべよ。」
そうか。
「妖夢のたぐいか?」
妖夢とは獏のような妖怪を思い浮かべればいいだろう。
夢の中に入り込み、獏のように良い影響を与えるものもいれば、そうで無い者もいる。
恐らく後者の方だろう。
「そうに違いねぇ。予知夢では、あんたに白羽の矢が立つけえ、頑張るんだべよ。」
「ええー、回避する方法は?」
亀婆さんはけろっと
「ネェな!運命みたいなもんだべよ。諦めるべさ。」
いっそ清々しい返事だった。
何か言おうとした俺だが、亀婆さんは川の中に飛び込んで行ってしまった。
お話は終了らしい。
「……帰ろっか。」
「遼テンション低っ?!」
テンションが底に落ちた俺と、それを必死にフォローするルナと一緒に家へと帰った。
帰ったら龍香が俺の分の飯まで食べていた。
氷華「すみません、ご主人様のご夕食は後30分はかかります。少々お待ちを。」
俺はとても哀しい気持ちになった。
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