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今日は3月3日。まだまだ寒く、雪だって降ってしまうかもしれない時期である。
そんな中、全校生徒“漢”褌一つでグランドに集合し、今日の“飛拏摩通離”が行われるのを、寒さで鳥肌になりながら待っていた。
あまりの寒さに耐えかね、軟弱にも『寒い』と一言でも口にしようものなら、校舎外壁登り100本の罰が与えられるため、誰もがうっかり言葉を口から出すまいと固く固く口を閉じ、ただひたすらに開始を待っている。
「これより、学校長挨拶」
キーンと一際高いハウリングの後、いよいよ偉大な絆愛高等学校校長 大田原権蔵氏が伊達政宗の『黒漆五枚胴具足』、あの金色の細い月形の前立で有名な甲冑のレプリカを身につけ登場。
見ている誰もが『今回も似合わねえ…』と嘆息しているのも気にもとめず舞台へと上がった。
「これより、絆愛高等学校伝統行事
『飛拏摩通離(ひなまつり)』を行う!」
大田原校長の低く太い大きな声に、マイクが破損しスピーカーから煙が立ち上る。
(毎度毎度、マイク要らねえだろ…)
その場にいた校長以外は毎回思っていることだが、誰一人我が身かわいさに迂闊に口に出す者はいない。
『飛拏摩通離』
選ばれた者は神聖な伝統行事の言わば“漢”神の使者として、まず俗世の穢れを落とす御祓を行いスタートする。
ルールは至ってシンプルなもので、 各クラスより二名代表を選出し、代表者全員でランダムに二名ずつペアを組み他のペアと戦う競技だ。
ペア内で先攻後攻を決め、交互にお互いを高めあう。
使っていいの己の“手”のみ…
このペアで交互に相手の肉棒に触れ、しっかり離れた場所まで発射させ、時間と飛距離に量、並びに角度と飛沫の美しさも芸術点として加点される。
優勝した場合、校長よりペアに記念品と、クラスに校長手作り絶品特製金つばが贈られる。
この金つば、一子相伝の金つばで、大田原校長以外材料はおろか作り方すらわからない幻の逸品だ。
歴代の優勝クラスでは、さらに食べたいと血で血を洗うような金つば争奪バトルが繰り広げられると言う。
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