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「また、バナナとキュウリの無人販売が至るところに設置されている…かつてないほど見るのが重い」
うんざり顔の小暮を『まぁまぁ』となだめ、太巻がバナナを手に取った。
「でもな、小暮が思っているより、終わったらあっさりしてるかもしれねえぞ」
「ミクは他人事だから…」
小暮は何十回目かのため息をつき、さらに落ちた肩を落とす。
「俺だって“棒起こし”が始まるまでは、言うに言えない苦悩があったんだぞ。不安をまぎらわせるために、ひたすらバナナの反復練習してたようなもんだったんだからな」
「ぶっくくく…喉を詰まらせてたな」
小暮は当時を思い出し笑う。
「新しい自分を発見出来るかもしれねえぞ」
「じゃあさ、練習相手なってくれるか?」
「ダメ!絶対ダメ!だって…俺…俺…」
太巻は赤い顔で下を向く。
「冗談に…決まってるじゃねえか…」
小暮はボソッと呟き無理に笑った。
「さあて、バナナでしっかり練習するか。ミク、あんなにバナナで練習してたし、バナナでなら教えてくれるか?」
「任せとけ!俺には名師匠が何人もいるからな。俺のゴールドフィンガーに恐れおののくがいい」
太巻は両手の指をワシワシと動かしバナナを擦った。
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