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「そういえばレイってさ」
不貞腐れた一名を放って、嘉樹が口を開いた。
「最近、泉堂と仲が良いよな。今日も、授業中に喋ってて注意されてたろ」
シシッとからかうように笑われても、何も言い返せない。あの時、俺は授業だということを忘れて泉堂と会話していたのだ。
「しかも、注意されてすぐにまた二人で喋ってるからさ、二人してよっぽど話したいんだなって思ったよ」
「別に、そんなこと……」
ない。そう言おうとして、口が止まる。いや、口にするさらに前、喉の途中で、無意識的にその可能性を俺はパッタリと打ち消してしまっていた。
「でも、俺から見ても二人はお似合いだと思うけどな」
「俺と泉堂が?」
お似合い、という言葉の中には、きっと想像するのも憚られるような関係が隠れている。どうしてそう思ったのか問い詰めたかったが、これ以上を嘉樹の口から聞かされると、これから変に泉堂を意識してしまいそうだ。
「悔しいけど、俺もそう思うぜ」
不意に口を挟んだ慶次は、肘を付いて上半身を丸くした。
「泉堂って学校中の男から人気ある分、それだけガードが堅いっつーか、あんまり男と話すイメージはなかったんだよ。俺、去年あいつとクラスが一緒だったからな、何となくわかるんだよ。現状、泉堂と一番距離が近いのって、多分お前だろうな」
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