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そんなことを急に言われても、反応に困ってしまう。
泉堂とは、今のクラスに変わってから席が隣同士になった。去年はお互い違うクラスで、お互い面識はなかったが、俺の方は名前だけおぼろげに耳にしていた。隣のクラスにかわいい子がいると、今は名前も忘れてしまった去年のクラスメートが話していたのだ。
そんな、わざわざ噂にするようなことかよ、と当時は内心毒づいていた俺だけれど、いざ彼女を近くにしてみるとなるほど、教室を越えて男たちの話題に上がるわけだ。確かに、泉堂瑚春はとても可愛い女の子だった。ぱっちりと開いた吸い込まれそうな瞳に、雪のように白い肌、笑うと控えめに現れるえくぼがとても愛らしい。近くにいる時に鼻をこらすと、なんとも形容しがたい女の子特有のいい香りがする。男でモテるのが嘉樹だとすれば、女子の筆頭は間違いなくこの泉堂だろう。俺は彼女を一目見たときから、決め込んでいた。ああ、この子はいわゆる、高嶺の花なのだ、と。
実際、慶次が言うには、去年の入学当初からそれはもうもの凄く人気があったらしい。クラス内外で彼女に言い寄る男は数知れず、日に複数回告白されることもあったとか。言うまでもなく、慶次も真っ先に突撃して、あえなく空振りしたみたいだ。
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