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ベッドの上で、ケースを手に取る。そっと開いてみると、不揃いの長さの十二色が、それぞれのあるべき場所に収まっていた。その中にあって、ほとんど削りたてのまま残っているのが、右隅に隣り合って並んでいる白と黒の二色だった。それが、まるで私と樋渡くんのように思えた。
(何考えてるのよ……)
勝手に想像しておいて、恥ずかしくなる。まるっきりバカみたいだ。そして同時に、保健室での自分は本当に大胆だったなあ、と思った。
コンコン、と部屋がノックされる。色鉛筆を眺めたままぼんやりとしていたものだから、一瞬ビクッとしてしまう。返事も待たずにドアを開けたのは、お母さんだ。
「瑚春、瑞季ちゃんが来てくれたわよ」
「瑞季が?」
お母さんがドアの前から消えて、入れ替わりに現れたのは制服姿の瑞季だった。どうやら、部活動の帰りにそのまま寄ってくれたみたいだ。
「おっす。具合はどう」
「いっぱい寝たから、少し元気になったよ」
そう、昼過ぎに家に帰ってから今の今まで、ずっと眠っていた。実のところ、完全に眠気を振り切れてはいない。
「まったく、雨に濡れて風邪引くなんて、子どもじゃないんだからね」
私が早退したことをどこかから聞いたのか、家に帰る途中に瑞季からメールがあった。床に着く前に返信をして、私はそこから携帯を見ちゃいなかった。
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