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「でも、やっぱり私は嬉しいけどね。瑚春が、男子と休日に会うようになってくれて。もうずっとそんなことなかったんじゃない」
「ん、そうかも」
「やっぱり、昔みたいになるのが怖い?」
「……」
昔、というのは少し大袈裟な表現だ。瑞季が指しているのは、たしか、二年前の中学三年生の時。私は、なるべく思い出したくない出来事を経験した。それ以来だろうか、あんまり、男の子と話したくなくなったのは。元々会話が好きな私が、一本線を引いたように、あるいは神経質なくらいに、男の子との会話を避けてきた。つまりは、それだけ私は傷付いた。一歩間違えれば、きっと今でもまだ、そのときのことを引きずっているだろう。
「でも、樋渡くんは、違う気がする」
根拠はない。私が見てきた樋渡くんは、授業中の横顔がほとんどだ。いったい彼の何を知っているんだ、と言われたら、口をつぐんでしまう。それでも、きっと、私は樋渡くんを好きになる。今よりも、もっと。
「頑張りなさいよ」
椅子のローラーを転がしながらベッドサイドまで近づいてきて、私の手からゼリーを引ったくった瑞季は、そのまま残りを一気に食べてしまった。
「もし、もしも樋渡君が瑚春を泣かすようなことがあったら、アタシがボコボコにしてやるから」
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