春嵐

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 何というか、そのメールは俺にとって、衝撃的だった。  ひとまず俺は、泉堂からであろうそのメールアドレスを、真っ先に電話帳に登録した。登録すること自体、前にしたのはいつのことだか思い出せないほど昔なため、時間がかかってしまった。登録を終えると、今度はベッドから出ずにそのまま本文を何回も見直してみる。長文ではあるけれど、ようは日曜日の待ち合わせ場所と時間を教えてくれ、という内容だった。もちろん、昨日の段階で泉堂に話しているはずもない。俺自身、学校を早引きして帰宅する途中にその事実に気が付いて、めちゃくちゃ後悔した。本当に、泉堂の家の場所を知っていたら、そのまま向かっていたかもしれないくらいに。そんな状態で、昨日は疲れていたはずなのに、悶々とした思いで一晩を過ごしていた。何せ、まともに頭が機能していなかったとはいえ、これまでにないくらいに、俺は勇気を振り絞って泉堂を誘ったのだ。もしもその約束を反故にするようなら、今後どうやって泉堂に顔向けすればいいんだ。そんなことばかりをバカみたいに考えながら、気がつくと俺は眠ってしまったのだ。  結局、泉堂は俺とは違い、秋那にアドレスを聞くという手段を使って、俺にこうしてメールを送ってきた。彼女を誘っておきながら、そうさせてしまった自分が情けなかった。
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