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それでも、もし慶次の言っていたことが本当なら、どうして泉堂は俺の誘いを了承して、あまつさえメールまでくれたんだろう。考えれば考えるほど、わからない。もしかしたら、そこには俺が自惚れてもいいような理由が隠れているんだろうか……?
ヤバい。そんなことを想像したら、日曜日に泉堂の顔をまともに見ることができないかもしれない。まだ、そうだと決まったわけじゃない。ifの可能性が、ミクロの単位で表面化しただけじゃないか。勝手に妄想して、勝手に意識しちまうなんて、どれだけおめでたいやつなんだ、俺は。
ベッドから頭を上げると、昨夜ほどではないものの、熱があるように感じる。保健室で計った最終的な体温は、三十八度二分だったけれど、この分ならちょうど昨日の今頃よりもまだ下がっているかもしれない。
左足から床に抜け出して、転がっている携帯を拾う。初めて自分の携帯を持ち始めたそのときからいまだに使い続けている、時代遅れのボロボロのボディ。当時は薄型だったけれど、今ではむしろかさばる方である厚さの側面は、塗装が剥げて銀色がむき出しになっている箇所がある。その中のメモリーに、泉堂のメールアドレスとたった一通のメールが記録されている。普段は教室で隣にいるだけだった存在が、こうして俺の部屋にいる。
鮮明に思い浮かぶその笑顔をいつまでも残したまま、俺は階段を降りていった。
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