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「おーい、こっちこっち」
生徒でごった返す食堂の騒がしさを通り抜けて、嘉樹の声を俺は拾った。キョロキョロと辺りを見渡し、当人の姿を探す。
「あそこだ」
俺より先に、カツ丼の乗ったトレーを手にした慶次が発見したみたいだ。俺たちは一列になって、人並みをすり抜けて数少ない空いた席を確保している嘉樹の元へ向かう。
「おつかれさん。今日はスゲー人だな、食堂」
席取りの担当だった嘉樹は、見渡す限り制服で埋め尽くされている空間を眺めて苦笑した。
「最近一年坊がナマイキにもここで食うことを覚えたみたいだからな。クソ、ちょっとは先輩に気を遣えよな」
カツ丼を乱暴にテーブルにおいた慶次がブツクサと悪態を吐く。そのまま手も合わせずにがっつき始めた。
「確かに、昨日今日で一気に一年が来るようになったよな。何でも、昨日に発行された一年向けの校内新聞に食堂をピックアップする記事が出たらしいぜ。ほら、うちのクラスにも貼ってあったろ」
「知らねえよ、そんなの。ったく、こっちはいい迷惑だぜ」
「そう言うなって、せっかく記事を作った人がいるんだからさ。どっちにしろそのうちこうなるはずだったんだから。少し早まったってだけのことじゃないか。なあ、レイ」
「あ、ああ」
二人の会話を横から聞くだけだった俺にも、とうとう矛先が向く。できれば、この話題は俺が口を挟むことなく流れていってほしかった。
まさか、二人(というより慶次の野郎にだけれど)言えるはずがない。
俺が、その新聞作りに一枚噛んでいるだなんて。
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