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その後は、特に慶次も愚痴を漏らすことなく男三人の昼食は黙々と進んでいった。一番に完食した慶次がごちそうさまも言わずにお冷やを飲み干して、開口一番こう言った。
「あー、彼女欲しい」
はあ、と何やら真剣な面持ちで溜め息を吐いて、そのまま嘉樹の方にちらりと視線を寄越す。
「なあ、誰か紹介してくれよ」
「無理だな」
何の脈絡もない振りを、嘉樹は自分のラーメンをすすりながら、右から左だ。取り合ってもらえなかった慶次は、大して期待してなさそうな顔で俺の方に照準を合わせる。
「レイ、お前は」
「いないな」
自分で無茶苦茶なことを言っておきながら、にべもなく断られて舌打ちを漏らす野郎を放っておいて、俺たちはそれぞれのものを食していく。今日の唐揚げは、いつもより脂っこい。
「ちっ、何だよてめーら。二人してモテるからってすかしやがって」
「モテるのは嘉樹だけだろうが」
反応をしたら負けだ、と思ったが、後の祭りだ。つい口を挟んでしまうと、後は慶次が勝手に風呂敷を広げていく。
「こいつは本当に、腹立つくらいガッコの女に人気あるよな。今日もな、休み時間に自販機に向かっている途中に隣のクラスの結衣ちゃんに話しかけられてやがんだよ」
かー、ムカつく。頭をボリボリ掻いている慶次に対して、俺たちは絶対零度の冷たさで対応していく。もう一年以上の付き合いがある俺はともかくとして、まだ知り合って間もない嘉樹にまで同じような反応を示されるということは、奴がいかに中身の伴わない会話を普段から展開しているのかを、如実に表していた。
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