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それでも、慶次の言いたいことも、分からなくはなかった。嘉樹は、確かに女子に人気があった。今までに知り合った男の中で、こんなにも表だった人気を博している奴を俺は知らない。明るく、男女分け隔てなく優しく接しているし、何せ、顔が整っている。綺麗な二重をしていて、鼻が高い。慶次がこうしてやっかむのも不思議ではないくらいに、男にとって理想的な顔立ちをしているのだ。そりゃあ、下駄箱にラブレターも入っているし、知らない下級生の女の子から告白もされるだろう。
「でも、慶次の言うこともあながち間違っちゃいないぜ」
と、俺の後に続いて完食した嘉樹が真っ直ぐ俺の方を見た。
「間違っちゃいないって?」
「レイだって、結構女子の中では人気ある方だってこと」
自分もそうだということには一切言及しない辺り、さすがだよなあと思ったが、それよりも今耳にした内容が俺には寝耳に水だった。
「俺が? 嘘だろ」
「や、それがマジなんだって。こないだの体育の時、レイがバスケしてるトコを見て、興味持ったコがいるのさ。それも一人じゃなくて」
「けっ、面白くねー話だぜ。嘉樹、俺のことを好きになってくれてるコはいねーのかよ」
ここで口を挟んでくる慶次の顔は、いよいよ機嫌が悪そうだ。
「んー……」
そこから、言葉に詰まる。
「あーあ、マジでやってらんねえぜ!」
みなまで言わなくともすべてを察した男は、やり場のない怒りを押し殺すしかなかった。
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