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「じゃあ、俺帰るわ」
俺の頭にポンっと手を置いて軽く撫でると、また明日な、踵を返す。
「え、ちょっ…」
思わず呼びとめると、不思議そうな顔して祐介が振り返った。
「何、どーしたん?」
「あ、いや…」
「なんやねん。」
「や、何でもない」
「あ、っそう。じゃあな」
祐介が踵を返そうとする。
「あ、ちょっと」
「あー?やから、なんやねん、って。」
「……!あ、そういや、タクシー代…!!」
普段一人暮しでなんともないのに、今日は何となく、一人になるのが嫌だと思った。
祐介を引き止める用事を必死で探すと、なんとか、用事が出てきた。よくやったと自分を褒めてやりたい。
「タクシー代?もう、えぇって。今度、宅飲みする時にでも埋め合わせしてくれれば、それでええよ。」
「…そうか。」
祐介がそんなこと気にしてたんかいと言って笑うと、また、帰る雰囲気になった。
「…じゃあ、今から宅飲みしようか」
思い切ってそう告げると、祐介が心底呆れた顔をして、こっちに近づいてきた。
「阿呆か、お前。しんどくなって帰ってきたのに、宅飲みって、阿呆か。ほんまにどうしたん?いつものクールはどこやったん?ほんまにさっきから阿呆ばっかやで。クールは貼りぼてかい、昔は常時装備やったのに。」
俺の頭を軽くチョップしながら、ソロタイムに入った。
「もしかして……、今日は俺の傍に居て?ってやつか?」
可愛い声色を作って、唇に指を当てて言うと、ニヤニヤと笑った。
そんな気持ち悪い声で思ってる訳じゃないが、一応は図星だったので、少し顔が熱くなった。
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