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「死ぬって…どういう…」
「山で命落とすって言ってるんだよ!!」
「志織…?命落とすって…何も俺等、大層な山登ってる訳とちゃうやん。…志織、大丈夫か?…体調悪いんか?顔色悪いで?」
祐介も俺に合わせてしゃがみこんで、顔を覗きこんでくる。
「…祐介…、俺が前に話した事、覚えてるか…?」
春だというのに、冷たい風が体を吹きつけて寒いというのに、よく分からない汗が手ににじむ。それを知らないフリして拳を握り締める。
「前って…もしかして、お前がちっさい頃に山で会った、ヤバい奴の事か?それがどうしたん?まさか、また出んのか?」
「…まぁ、そんなとこだ。」
…違う。ただのヤバい奴じゃない…けど、祐介には変質者ってことにしてある。…俺は…そいつに………
無意識に左肩を押さえる。
―光景がフラッシュバックする。
「同じ山登る訳ちゃうし、あれからだいぶん経ってるやん。大体、そんなことやったら、天城になんやかんやと言う前に俺が危ないんとちゃうん?他の新人にも注意せなあかんし…」
ギュッと目を閉じて振り払おうとするが、最近よく現れるアイツがニヤリと笑う姿が見えて、消えたかと思うと、森が見えた。そこには、俺が……いて……
…俺が天城を…
「え?何て?」
最悪の光景の中から、祐介の声で引き戻される。…冷や汗がすごい。とりあえず、平然を装って誤魔化す。
「いや…何も…」
自分自身をも誤魔化す為に、ぎゅっと左腕の服を握りしめた。
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