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実際は数分のはずだが、俺には何時間も待った感覚がした。
タクシーを呼んでくれた様で、祐介が店から出てきて、暫くもしないうちにタクシーが来た。
祐介は俺をタクシーに押し込むようにして乗せると、俺のあとから乗り込んで、俺の家を行き先として告げた。
「ほら、荷物。」
「ありがとな。…あ…そういや、勘定…」
「あぁ、今度奢れって言うてたで。せやから、気にせんでえぇよ。それより、みんなお前の心配してたぞ。いつもとちゃうってな。」
「…そうか」
「ゆっくり休めばええから、なんなら寝てても構わへんで。」
「…」
「勿論、着いたら叩き起こしたるから。…凭れて寝とき。」
祐介が肩に腕を回して俺を引き寄せ、ポンポンと頭を撫でた。
相変わらず母親気質だなぁと思いながら、甘えて、黙って目をつぶった。
「とーちゃく…っと。ふぅ―…。…志織ー、大丈夫かー?なんや、コイツ、すやすや寝とるなー。」
頬をぷにぷにと押されている感触がして目を覚ました。
「んっ…、祐介?」
「ほら、家に着きましたぜ。水でも飲むか?」
「…もらう……」
寝起きで何も考えられない頭で返事する。
水の入ったコップを受け取り、飲み干せば、徐々に様子が理解出来た。あれ、いつの間に帰って来たんだっけ。部屋を見渡し、時計で時間を確認して首を傾げる。
「感謝せーよ、タクシー降りたと思ったら凭れかかって寝よったから、背負ってここまで運んだんやで。」
「…わ、悪かった。」
確かに、自分で歩いてたどり着いた記憶がない。思わず謝ると、祐介がわざとらしく、肩こったわーと肩を叩いた。
「悪かったって…」
俺が申し訳なさそうに言うと、ハハッと祐介が笑った。
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