シングルマザー

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この日1日、散々悩んで 《言おう》と決めた。 それなのに・・・ 昨日のタイトなスーツとは全然違う ラフな薄いブルーのシャツ姿。 昨日は気づきもしなかった 僅かに茶色がかった彼の髪。 本屋で吉川さんを見つけた瞬間から 私の胸に暖かい何かがジワリジワリ と広がって・・・ もっともっと 吉川さんの近くにいたい… そんな我儘な欲望に心は埋めつくされ 結局・・・ 私は彼に何も伝える事ができなかった。 それどころか 罪悪感に追われながらも 「荷物、持つよ」 少し強引に鞄を手に取り さりげなく握られた大きな手のひらに 心ごと もたれたい衝動に かられていたのだ。 バカだ。。本当にバカ。。 明日からはもっと言いにくくなる。 分かってる。 なのに一緒にいる時間が甘く幸せで。 話しを切り出して まだ始まったばかりのこの時間を 掴みもせずに失ってしまうのが スゴク怖くて。 はぁ、私、 何をやってるんだろう。。。
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