現実

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「キレイにしてるんですね」 夜の国道をややスピードを上げて 滑るように走る彼の車は 国産のステーションワゴンだった。 「部屋は汚いけど。車だけはね」 始めて乗る崇人以外の男性の車に 落ち着かない私。 夢心地のまま 少しでも自分が綺麗に見えるようにと 気を抜くと開きそうになる足を 揃えてみたりとモゾモゾしてるうちに 車は静かに停車され サイドブレーキをかける音で これは確かな現実だとハッと 引き戻された。 ――言わなきゃっ。 タイミングをはかるなんて 私には、やっぱり無理。 ストレートに話すしかない。 「窓、開けていい?」 吉川さんの了解をとって 半分程下ろしたウインドウから 肌寒い秋の夜風と共に 潮の香りが車内に流れ込む。
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