現実

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本当はちっとも耳に入ってこない 波の音に聞き入る振りをして 視線を黒い海原に向けたまま 「実はね・・・私バツ1なんだ」 散々、考えていた場面。 決めていた通りに 軽く、明るい声で言った。 「えっ・・・!!」 車内の空気が一瞬止まり けど、すぐに 「だから、こないだあんな質問したんだ」 納得いったという風に うん。うん。と頷く吉川さんは だけど、そんなに驚いている様子でも無かった。 「今21でしょ? いくつの時に結婚したの?」 「18。19になる直前」 「早っっ。焦り過ぎ~」 若気の至りと思ったのか 笑いを含むそんな反応。 吉川さんみたいな人だったら 21でバツ1なんて話しも 周りにありふれていて 珍しくも無いのかもしれない。 思ったよりすんなり受け入れてもらえそうな気配に少しだけ気が楽になる。 だけど・・・本題はこの先だ。 「でね・・・」 駆け上がる鼓動に 震えそうになる身体を 自分の両手で腕を組むように 抱きしめた。 寒いのかと勘違いした吉川さんが 車の窓を閉めたせいで 急に車内に静けさが広がる。 「籍入れてすぐ。 19になったばっかで子供産んだの。 男の子」
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