現実

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「香奈ちゃんスゲー可愛いし、 いい子だし俺、ぶっちゃけ好きになりかけてると思う。 けど・・・ゴメン。 カッコ悪いけど子供の父親役は 俺には無理だわ。 香奈ちゃんが、それでも良いなら俺は全然OKだし むしろ、これからも会いたいけど」 何?どういう意味? 「・・・それって 子供に会いたくないって事?」 「というより ・・・育てられない ・・・育てたくないって事」 !!!! 見えない何かに殴られたような 衝撃が頭に走った。 育てたくない・・・。 育てられない・・・。 拒絶・・・された? 「・・・そっか。 そう・・・だよね。 自分の子じゃないもんね・・・」 「それもあるけど子供の存在が 香奈ちゃんと元旦那を結びつけてる気がして自分には受け入れられないと思う。俺、心の狭い男だから」 「・・・・・・」 「香奈ちゃんを愛せても 父親の遺伝子を纏ったその子を愛するのは難しいんだ。 もともと子供好きじゃないし 苦手だから・・・ごめんな」 吉川さんが腕を伸ばし 私の頬を伝う涙を ソッと人差し指で拭った。 指先から漂う かすかなタバコの匂いに 感傷的になった私の涙腺は 留まる事を忘れてしまったようで 溢れ出る涙を止めるすべも無く ただ ひたすらに 私は 泣き続けていた。
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