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「・・・・・・」
「無理して付き合っても・・・上手く行かないと思うし。無駄に香奈ちゃんを傷つける事は俺もしたくない」
「・・・これが現実なんですね」
「俺も1回失敗してるから慎重になってる所あるし、香奈ちゃんは遊びで付き合えるタイプじゃないから。引き返すなら今だと思う」
「それって、いい意味・・・かな?」
「うん。香奈ちゃんには幸せになって欲しい。だけど俺といても幸せにはしてやれない・・・真面目にそう思うから。でも俺、良い友達にはなれると思うよ。力になりたいし相談ならいくらでも乗るから、また気軽に連絡してよ」
「・・・はい」
始まりもしなかった関係の終りはあっけなく自分の価値まで軽くなった気がして虚しさがつのる。
「じゃあ、また。頑張ってな」
最後まで大人に徹する吉川さんは
軽く手を上げ帰って行く。
たった1歩の恋の境界線を踏み出すのに
こんなに色んな事を考えたのは
始めてで。
簡単じゃない。
そんな厳しい現実と冷めた感情に包まれ悲しさを通り越した私は
涙を流す事すら出来なかった。
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