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家事の苦手な母さんのおかげで
散らかり放題のリビングじゃなくて
普段は使ってない和室の方に
香奈を連れて行く。
「はい、いらっしゃい」
にこやかに対応する母さんに
香奈もホッとしたようで
力の入っていた肩が少し下がった。
「ほ~ぉ、これは可愛らしいお嬢さんだね」
父さんが眉尻を下げて香奈に微笑む。
「深沢 香奈さん。22歳。
リーベンでバイトしてた時に知り合って最近、再会したんだ」
俺の紹介をうん、うん、
と聞いている父さんに香奈が
「家の近所で人気のお店のバームクーヘンです。皆様で、どうぞ」
そう言って手土産を渡した所までは
順調だった。
「あら、それ有名なお店よね?
わざわざ、ありがとう」
コーヒーを運んできた母さんが
包みに目をやって
一瞬、ニヤリとしたから
俺はてっきり香奈との事を認めてくれたのかと思ったけど・・・
「でも、篤はダメよ」
甘かった・・・。
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