ー篤 Sideー

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何事も無かったかのような 日常が無理矢理に流れる 家の中には 空々しさが充満していた。 父さんも母さんも、この奇妙な気配を 気づかないフリをするのに必死だ。 このまま話が流れればいいって きっと・・・思ってる。 そんな拒絶の空気の中 「俺、香奈と結婚するわ」 ダイニングで 母さんの用意してくれた 晩飯を口に放り込みながら 「もう決めたから」 俺はキッパリ宣言した。 ぶっちゃけ 味なんて分からないぐらい 緊張が半端ない。 「また、唐突だな」 リビングでTVを見ていた父さんが 重い足取りでやって来て 俺の向いに腰かけた。 取り合う気も無いというように  流しで洗い物を始めた母さんの背中が この話を断固拒否しているのは 分かったけど そんな母さんにも聞こえるよう 俺は大声で話を続けた。
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