ー篤 Sideー

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「母さんの言ってた事、 ちゃんと分かってるから。 大久保の跡取りは・・・ これから折を見て考えていかなきゃって思ってる」 「お前、香奈さんの子供を 責任と愛情を持って きちんと育てられるのか? 香奈さんは1度離婚を経験しているし 『やっぱり大変だから別れたい』 なんて甘えは許されないんだぞ」 父さんが厳しい顔で聞いてきた。 「うん。色々あると俺も思う。 けど侑右・・・香奈の子供の名前だけど、侑右の事で香奈と一緒に悩んだりするのも俺じゃなきゃ嫌なんだ。 分かるかな? そういう事も全て一緒に やって行きたい・・・ 誰にも譲りたくない・・・ それぐらい俺にとって 香奈は大切な人で。 少しキザだけど 俺の気持ちを言葉にしたら まあ、そんな感じだから」 親の前での、このセリフ・・・ 恥ずかし過ぎだろ、俺。 父さんから目をそらし たまたま手にしていた納豆を 無心にかき混ぜた。 青々としたネギの辛みが 今日は一段と目にしみる。 「・・・篤は・・・決めたのね」 溜め息混じりの 呟きが聞こえてきて 俺は手を止め母さんの背中を見つめた。 「何が正解かなんて      分からないものよね・・・」
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