『文鳥・夢十夜』

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紙袋を提げた女が現れる。 扉はオートロックらしく、鍵を差さずともカチリと鳴った。 「慣れた?」 彼女に警戒する様子はなく、落ち着いた動作で俺の元へと歩いてくる。机の前まで辿り着くと、提げていた紙袋を床に置いた。 「監禁に慣れもクソもないだろ」 俺は机を挟んで向かい合った彼女を一瞥する。俺をここに監禁する張本人であり、中学まで同じ学校に通っていた幼馴染み。 「住めば都。その内ここが好きになるわ」 「その前に出してもらうからな」 なぜ彼女がこんな真似をするのか見当もつかない。1度尋ねてみたが、「何となく」の一点張りだった。 「どうだった? 夏目漱石の『文鳥・夢十夜』」 唐突に始まる書評会。認めたくないが、俺はすっかり、この流れに慣れていた。
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