『文鳥・夢十夜』

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給食係のお知らせ『メニューリクエスト募集!』を彼女に手渡す。 「ありがとう。また来るからちゃんと読んでね」 彼女はそれだけ言って背を向けた。扉に鍵を差し、部屋を出ていく。 腕時計を確認。 午後6時15分。 紙袋から今日の分の着替えと食料を取り出す。リクエスト通りの牛丼だった。しかも吉野屋という指定まで。 「いただきます」 牛丼に箸をすすめながら、俺は壁中の本棚を眺めた。 ここに監禁されるまで読書の習慣のなかった俺でも、本の状態からして古新問わず並べられているのがわかる。 何読もうかな。 と、考えている自分。 読書欲というよりは、他にすることがないと言うべきだろう。
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