女、現る

2/3
前へ
/3ページ
次へ
「何見てんのよ?」 天井に張り付いている女がそう毒突いたのは、僕が眠りにつこうとベッドに潜り込んだ時の事だった。 僕は常日頃から感情を面に出さないように心掛けている。 だからこの時も、悲鳴を上げたり失神したりすることはなかった。 仰向けのまま言い返す。 「ここ、僕の部屋なんですけど……」 最寄り駅からリア充絶望間違いなしの徒歩20分。 森と化した空き地に囲まれ、夏にもなると図鑑にも載っていない昆虫が室内で発見される。 共益費込み家賃は驚きの3万切って2万9千円。 その名も『コーポ・銭ナシ』。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加