カタチが変わる

そんなはなし

　「あ、おかえり」
　ごはんどうする？と続けた母に、着替えたら食べるねとだけ伝えて部屋に入った。いつもなら寒くて脱ぐのをためらうのに、リュックを落として、服はほとんどベッドに脱ぎ捨てる気分ですぐに部屋着に着替えた。

　結局あのあと電話から戻った後、玲は強く言い過ぎたって謝ってくれたけど、ちょっとだけ気まずい雰囲気でカメダを後にした。

『俺浪人することにしたわ』

　みんな自分で決めていくんだ。みんなきちんと自分と向き合ってる。決められないのは
”私だけ"なんだ。

　ベッドの上に顔面からダイブ。脱ぎ捨てた服をかき集めてひとつ息を吸い、大きく口から吐く。手前にあったモッズコートからはかすかに喫茶店の、にがいにがいタバコの臭いがした。