2人が本棚に入れています
本棚に追加
「おう、のぶ」
「うっす」
よーいしょっ、と。並んで座っていた私たちの真ん中に割り込み腰を下ろした。そしてけいとと私の、空き缶と潰れた紙パックを交互に見て、誇らしげに缶コーヒーを一口あおった。お決まりの「ぷはー」というわざとらしい声を上げる。
「のぶ、おやじみたいだね」
私がそう言うとのぶはぴたっと動きを止め、またわざとらしくおどける。
「えー、ちゅんひどい」
「いや、ちゅんはひどいやつだから」
「二人とも、私の扱いがひどいよ?」
のぶがおどけてけいとは冷静につっこむ、いつものことながら、私は否定しながらおかしくなってきて笑ってしまった。
「もうこんなことできるのも後少しだな」
ふと、のぶがつぶやいた。それはさっき、けいとと私が流した話題だったのに。
「そだなあ、まあ進路が決まらない人にとっては卒業とかどうでもいいんじゃね?」
浪人したって構わない、と言っていたけいとは、推薦を受けた。手応えはいいと言ってたけど結果はいまだ聞けていない。
「私も決めなきゃなあ」
「「は?」」
ぼそっと答えた私に2人は動きを止めた。
「え、なに。ちゅん、お前決まったって」
言ってたじゃん、を省略するのぶ。
「うん、でも一応国立も受けたの」
「国立、いくのか」
けいとは相変わらず冷静だった。
「受かったらね、まあ無理だと思うけど」
小さく笑った。私が行きたいと言っていた国立大学は遠く、盆と正月くらいしか帰れないような場所。ふうん、と不満な顔をするのぶの隣でけいとはずっと黙っていた。
私たちは決して全てを話さないし、お互いに聞かない。ただ、必要なときにつるみ、時間をともにするだけ。といっても、ドライな関係というわけでもなく、いい距離感を保っていると思う。
「ごめん、言うタイミングなくて」
ほんとは言いたくなかったけどね。
最初のコメントを投稿しよう!