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さっきから鼻の奥が痛い。
――またか。
私は最近よく泣いてしまう。毎日のように涙をこぼす。いまは、そうだ、なんでだろう。自分からけいとに話したのに、話してしまったことを後悔している。校庭の向こうは、霞んでいてよく見えない。それなのに一瞬で見分けられてしまう。
かなしい。でも、
「すき」
はっ、と周りを見渡す。つい言葉が出てしまった。けいとがいなくてよかった。
やっぱりすきなんだ、私。どこが好きなんだろうな。別に顔も普通だし、スポーツ万能でもない。好きなはずなのに、いいところがみつからないとか。笑える。
遊んでるなら突き放してほしい。それは優しさじゃなくて同情、なのに。
あ、もうこぼれる。
――ガサッ
「捨ててきたよ」
すんでのところでけいとがポケットに手を入れて帰ってきた。
「ありがと」
よかった、あと少し遅かったら、涙が堰を超えていた。
ほっとした顔が伝わったのか、けいとは複雑な顔をしていた。
「あのさ、どこ行くんだよ」
「え?」
「デート、どこ」
単語だけで無愛想に聞いてくる。けいとはすぐ横に立ったまま。
「神社と、リゲル通り」
「そっか」
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