case3.庶務

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放課後、生徒会室に入ると、 珍しい事に副会長が机につっぷしていた。 「お疲れ様ですー……どうかしたんですか?」 声をかけると、副会長は顔を上げた。 「あ、庶務くん。お疲れ様。 ちょっと相談したい事あるんだけど、いいですか?」 「はい、どうぞ」 さらに珍しい事もあるもんだ。 この人が俺に相談事だなんて。 困った事があれば、いつも画面の向こうのお友達にふざけながら相談している事を俺は知っている。 まあ最終的には親衛隊隊長をしている、自分の幼馴染に頼る事までお決まりなのだけれど。 「あのさ、自分を大切にしてくれるストーカーと結婚したら幸せになれると言うのは本当だろうか……」 彼はやたらと深刻な顔でそう言った。 なんだろう、この質問。 っていうか相談……だったよな? 外堀から埋めてくるストーカーでも出来て、 両親が乗り気とかそんなんだろうか、かわいそうに。 でもそれだったら、やっぱり俺じゃなくて幼馴染に行けばいいのに。 いつも通り、最終的にはそうなるだろう。 だから俺は適当に、軽く返せばいいと思う。 「相手に嫌悪感とか無ければ、それもいいんじゃないですかね?」 「…………ない、ないわーw 嫌悪感とか全然無いわ、どうしよーwww」 副会長、素が出てますよ。 そしてまた机につっぷしたので、しばらくそっとしておこうと俺は立ち上がった。 丁度、生徒会顧問の先生に見てもらわなければいけない物があったからだ。 先生はまだ職員室だろう。 その間に副会長の幼馴染のあの先輩が副会長を回収していってくれますように。 そう願いながら生徒会室を出た。 俺以外の生徒会のメンバーは全員キャラが濃い。 その中で平凡な俺がやっていくのはちょっと大変だ。 けれどそれでも、毎日欠かさず生徒会室で雑務をこなすのは理由があるから。 好きな人と会うためには、ちょっと位の苦労は厭わない。 そう言えば、大抵の人は納得してくれるだろう。
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