case3.庶務

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この学園の生徒会は、家柄や見た目が良く生徒に人気があり、尚且つ成績優秀・生活態度それなり が条件だ。 人気投票とも言うべき生徒会選挙でメンバーがほぼ決まるのだから、一つ目は当然。 そこに、先生方の確認が入って確定となる。後者二つはそこで重要。 そんな中に、家柄それなり見た目もそれなりな俺が唯一入り込める役職。 それが庶務だ。 生徒人気は格別良くなくてもよく、 逆に見た目が半端に良いと投票で不利。 重要なのは、真面目に仕事をこなせそうか否か。 生徒会の人たちに近づきたい奴らは、競いあい、牽制しあうから それ以外の目的の場合は意外と票が取りやすい。 そして会長たちと同じように、生徒会の特権が貰える。 しかし、デスクワーク中心の彼らと違って、校内を毎日走り回る事になる。体力重要。 それが、この学園での庶務という存在だ。 そして俺が庶務になろうとした理由。 それは、中等部生徒会長の灰谷に、 高等部の先輩として、生徒会の仕事の相談に乗りつつ指導するという名目で会うためだ。 一昨年。 中等部の二年だった俺は、半強制的に押し付けられた学級委員として、生徒会室に時々出入りしていた。 ちなみに押し付けられた理由は、会長達に興味が無さそう・野心が無さそうという理由だった。 そこで、当時の書記に選ばれていた灰谷と出会ったんだ。 あの頃の中等部は、ちょっとおかしい転校生により荒れに荒れていて、 今はもうこの学園に居ない人が当時の生徒会長だった。 その生徒会長は、新入生である灰谷を放って遊び呆けていた。 生徒会顧問や副会長達も同じくで、他に誰も居ない生徒会室で 何をしたらいいのか困り果てていた灰谷に出くわしたのが初対面だった。 泣きそうな顔で座り込む彼に、俺は声をかけた。 そこで張りつめていた何かが切れたのか、ボロボロと涙をこぼす灰谷。 号泣するイケメンという、あまり見ない光景。に、何故だか少々ときめいた。 けれどその時は気の迷いだと、 俺としても、持っていっても結局自分で処理するしかない学校行事の書類に気が滅入っていたんだ。 疲れてるんだなーと自分を納得させて彼をなだめる事に徹した。
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