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そして、荒れている学園生活の中でも友人たちがまだ楽しみにしている行事を、失敗に終わらせたくないと、
生徒会役員でもないのに必死に覚えた事達を灰谷にも教え、その場は乗り切った。
でも、たった二人でそんな事を続けられる筈がない。
まもなく、限界が来たと密かに見守っていたらしい風紀委員が出てきて、当時の生徒会は解散になった。
そして改めて灰谷が書記に任命された。
他のメンバーとして、会長は現高等部会長。
因みに彼は、それまで風紀委員に所属していたが、
生徒会を立て直すためにと風紀委員長に任命され、
意外とイケるなと自分で思ったらしく、高等部では自ら立候補するまでになった。
副会長も会計も、それまでの役員の人気後退により急上昇した、今の二人だ。
書記はすでに灰谷で決まっていたから、現高等部書記は、高等部に入ってから生徒会入りした唯一の人物である。
その時に一応俺にも入らないかと声はかかったが、生徒人気云々で断った。
……しかし捨てられた子犬のような目で見てくる灰谷のせいで、ついうっかりと庶務になってしまったんだ。
そしてやたらと懐いてきた灰谷にある日告白され、
ズキュンと来てあの日を思い出した俺はそれを受け、めでたく付き合う事になった訳だ。
けれど誰かに気づかれれば俺は嫉妬の対象に他ならない。
荒れていた頃をまだ引きずる現状として、秘密にしていた方がいいだろう。
いつ誰に、嫌がらせや暴行を受けるとも限らないから。
それの引き際が見つからないまま、俺は中等部を卒業した。
すると、毎日会う事は叶わなくなる。
生徒会の役員といえど、中等部と高等部を行き来するには――特に特別校舎やそれと同等の役員の部屋には許可が必要になるからだ。
俺の寮室なら簡単に入れるのだけれど、周りや同室者が放っておかないだろう。
……こんな事なら、いっそ俺も特権で一人部屋にすればよかったかと時々思う。
そうすれば、中等部も高等部も関係なく、寮内だけは簡単に入れるようになるらしいからだ。
まあそれはおいておいて。
会える場所を作り出す手段として、高等部でも庶務でいる事を俺は選んだ訳だ。
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