case3.庶務

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「ちょっ、俺は真剣なんですよっ?!」 それは知ってる。 けれど真剣に、このかすかな匂いを気にして 対処として自分の匂いをつけるために頭をこすり付けてくる。 その思考や行動、表情が俺を笑わせているのだから、彼の訴える姿は逆効果だ。 「もー、真面目に言ってるんです!」 「……っ、悪い。ごっめんなぁ?」 だめだ、本当に真剣にむくれてくる彼が面白くて仕方ない。 必死に笑いをこらえようと頑張っていると、灰谷の口がへの字に曲がっていく。 そこでまた波が来た。 「…………先輩……」 「ごめんって!」 なんだろう、この、 真面目でしっかりしてるかと思いきや意外に面白い生き物は。 他の人にはあまり見せない、 きっと本当は一目惚れしたんだと思う、情けない姿や妙な思考。 そこが俺の好きな所なのかもしれない。 「かっわいいなぁ」 つい笑いながらそう漏らす。 と、灰谷の動きが止まった。 真っ直ぐに俺を見据える姿に、 あ、ちょっとこれは本気で怒ってるかも。 珍しく、マズイかもと感じた。
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