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俺は2人の間に割って入ることもできず、
ただ彼の隣に突っ立っているだけだった。
ひたすら拒否され続ける事に焦れたのか、突然会長は彼の顎を掴んだ。
そして無理矢理に塞がれる唇。
…………。
数瞬の沈黙の後、さっきよりもうるさくなって絶叫は帰ってきた。
「た、拓斗(たくと)……?」
耳を劈く騒音にも無反応で固まる彼に、恐る恐る声をかけた。
ちなみに会長はニヤニヤしている。
俺の声に反応した彼は、バッと勢いよくこちらへ振り向いた。
「真之(まさゆき)…………ごめん」
何故か謝ってきた彼に、
『きっとこの騒ぎに巻き込んだ事についてだろう』と思った俺は、
彼が謝る事では無いと、そう言おうとしたはずだった。
しかし言葉は音になる事が出来ず、口から出ないまま飲み込まれた。
何故なら、彼の唇が今度は俺の物とくっついていたからだ。
すると周りから今度は野太い悲鳴が聞こえてきた。
中には会長の声も混じっている。
……何だこれ。
拓斗が何かを会長に言ったようだったが、彼の声を俺が聞く事は出来なかった。
そして悲鳴以外に拾えたのは、今度もまたよく解らない会話だった。
「あれも王道ってヤツか?」
「いや、ちょっと違いますかね」
そんな会話を繰り広げながら、彼らは何故かこちらへと近づいて来る。
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