case4.書記

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「ええと、それで……その、フェロモン的なものはどうにかならないのか?」 「残念ながら……体質なので」 どうにかなっていたのなら、今自分はこの学校にいない。 そう言った拓斗は、クラスメイトの彼氏を奪ったとか言われて流血沙汰になり、転校を余儀なくされたらしい。 何だそれは、と言いたくなる体質は、彼にとって辛いものだろう。 けれどその所為でこの学校に来る事になったのなら、 俺にとっては幸運だった。と、不謹慎な事を思ってしまった。 「俺だって、好きで男にモテてるんじゃないですよ……」 力なく呟いた拓斗に、委員長たちが謝りつつ慰めをかけた。 ……そりゃ、外部生で男にモテたい奴なんて少数だろう。 初等部からこの学園で過ごして、染まりきった人間とは違うのだから。 望まぬ好意なんて、向けられても迷惑なだけだ。 「そんな難しい顔するな。 恋人がそういうんじゃ大変だろうけど、俺らもできる限りの協力はするから!」 唐突に副委員長が、俺にそう言った。 すると俺が何かを言う前に拓斗が返す。 「ちちちちち違います!恋人じゃ」 ないないないんですごめん!と、途中からは俺を向きながら言った。 副委員長が勘違いをしたのは、さっきのキスのせいだろう。 そう。そういえばさっき拓斗は俺にキスをした。 なんでだろう。 もしかすると会長にされた直後に俺にする事によって、 キス位誰とでもできる。人類皆そう!今のは挨拶! だから勘違いしないでください!的なアピールだったんだろうか。 会長に何か言ってたみたいだしな。 「違うよ」 俺の考えを読み、否定するかのような事を言われた。 そして、 「今アイツ、なんか言ったか?」 「いえ」 「だよなー……エスパーか!」 「HSKかっ!あ、まだか!」 初めて2人の会話に、とても同意できた。 でも最後のはよく解らない。
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