case1.会計

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「はいはい、わかったわかった」 作文も含め、本日何度目かの俺の愛の告白を先生は軽く流す。 そして他の先生に見つかったら誤解されるかもしれない原稿用紙を畳んで仕舞った。 今週のこの時間も、もうおしまい。 折角だから、もっと時間をかけて書けばよかったかも。 そうすれば書いてる間の、先生の視線を独り占めできる時間が増えたのに。 よし、次は小一時間と言わず二時間ぐらいかけてみようか! そんな俺の考えなど知らずに、先生は俺を椅子から立たせる。 ふと窓を見ると、もう夕焼けも沈み切りそうだった。 「せんせー、さよならのチューしよう!」 両手を伸ばすと、届いたのは先生の唇でも腕でもなく、俺のカバンだった。 「はいはいはいはい!早く帰れ。もう暗いからな」 気を付けろよ、と言いながら先生は俺の体をドアへと押す。 あー、今週も俺の幸せタイムが終わってしまった。 肩を落とす俺の耳に届いたのは、けれど、ドアを閉める音ではなく、先生の声だった。 「じゃ、また来週な」 くしゃっと、俺の髪を撫ぜて。 それからドアが閉まった。 ……あ、多分俺、卒業式まで制服ちゃんと着ないや。 多分、っていうか絶対。 case1.会計 END
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