case4.書記

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「あなたは彼を抱きたいんですか?」 「え?」 何で唐突にそんな事を聞かれたのだろうか。 「イエスかノーで簡潔にお願いします」 「えっと、の、ノー……」 彼はうんうん、と満足そうに頷いた。 「あ、で、でもい、イエス……?」 「ん?」 触れたい、と思う。抱きしめたりとかそういう事も。 だからイエスかもしれない。という事を言うと彼はフーと深く息を吐いてから言った。 「いいですか?タチっていうのは、セ……えーと……ニャンニャンするときに基本的な態勢で上にいる方の事です」 「にゃ……?」 途中で言葉を選ぶようにして告げられたのは、よく解らない事だった。 「つまり、えー……新しい生命を宿したい男女でいうならば男の方。そういう行為をする場合の男役の方を言うんですよ」 「そ、そう、なんです、か……」 言いたい事は何となくわかった。 「で、そういう意味でもう一度、イエスかノーか。お答えをどうぞ」 問われた時、頭の中を駆け巡った妄想はきっと一生口にはしないだろう。 二種類の想像はいとも簡単に答えを出してくれた。 「ノー、です」 今度は言い切った。 その答えに満足げな表情で川添くんは続ける。 「ならあなたはネコなので彼の体質は無効化です!よかったですね。あなたの好きは本物です」 ニコリと、彼は笑う。 そうか、今やっと拓斗の体質を本当に理解した。 それと同時に顔から火が出るような感覚を覚える。今度は俺が両手を組み、わなわなと震わせる番だ。 でも、川添くんは理由が違う気がする。 俺は拓斗への想いを完璧に自覚した事と、それに加え川添くんになんという説明と質問を受け、そして返答をしたのかという羞恥からだ。 でも今の機会がなければ、きっとどうする事もできなかっただろう。 きっとこの先ずっと拓斗とまともに話すことはなく、一生弁解などできないのだろう。 でも今ならきっと、出来そうな気がする。
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