763人が本棚に入れています
本棚に追加
「あなたは彼を抱きたいんですか?」
「え?」
何で唐突にそんな事を聞かれたのだろうか。
「イエスかノーで簡潔にお願いします」
「えっと、の、ノー……」
彼はうんうん、と満足そうに頷いた。
「あ、で、でもい、イエス……?」
「ん?」
触れたい、と思う。抱きしめたりとかそういう事も。
だからイエスかもしれない。という事を言うと彼はフーと深く息を吐いてから言った。
「いいですか?タチっていうのは、セ……えーと……ニャンニャンするときに基本的な態勢で上にいる方の事です」
「にゃ……?」
途中で言葉を選ぶようにして告げられたのは、よく解らない事だった。
「つまり、えー……新しい生命を宿したい男女でいうならば男の方。そういう行為をする場合の男役の方を言うんですよ」
「そ、そう、なんです、か……」
言いたい事は何となくわかった。
「で、そういう意味でもう一度、イエスかノーか。お答えをどうぞ」
問われた時、頭の中を駆け巡った妄想はきっと一生口にはしないだろう。
二種類の想像はいとも簡単に答えを出してくれた。
「ノー、です」
今度は言い切った。
その答えに満足げな表情で川添くんは続ける。
「ならあなたはネコなので彼の体質は無効化です!よかったですね。あなたの好きは本物です」
ニコリと、彼は笑う。
そうか、今やっと拓斗の体質を本当に理解した。
それと同時に顔から火が出るような感覚を覚える。今度は俺が両手を組み、わなわなと震わせる番だ。
でも、川添くんは理由が違う気がする。
俺は拓斗への想いを完璧に自覚した事と、それに加え川添くんになんという説明と質問を受け、そして返答をしたのかという羞恥からだ。
でも今の機会がなければ、きっとどうする事もできなかっただろう。
きっとこの先ずっと拓斗とまともに話すことはなく、一生弁解などできないのだろう。
でも今ならきっと、出来そうな気がする。
最初のコメントを投稿しよう!