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あたしが自分の部屋で宿題を終わらせてテレビを観に来た時も、
友達とバレーをやってから帰ってきた時も、夕飯を食べ終わってからも、絶対にいる。
別にそれが悪いわけじゃないんだけど、
なんか見てて良い気分じゃないんだよなぁ。
ママもそれを見るたび、いつまでだらだらしてるの、来年受験なのよ、とか言ってるんだけど、姉ちゃんには馬の耳に念仏だ。あたしはいつだってこれはどうにかしなければならない問題だと思っていた。
「ユキー!電話よ!」
あたしがうだうだやっていると、ママの声が聴こえた。
時計を見ると、11時29分。日曜日のこんな真昼間に電話してくるのはきっとあの人だ。あの人しかいない。
「もしもし?」
「ああ、ユキか?おはよう、私だよ。カトリだよ。」
「うん、わかってたよ。」
彼は郁原カトリ。年齢不詳、国籍不詳、職業不詳、もはや郁原カトリというのが本名かどうかすら怪しい。
解っているのは、彼はあたしの友達だということと、
金持ちだということと、めちゃめちゃ天才だということ、天才過ぎて非常識極まりないこと、動物と話せるということ、それからいつだってなんだか怪しげなものを作っていること。
「私の3時間の努力が報われそうなんだ、早く来てくれ!」
「たった3時間ならあたしがその瞬間を見届けてやる必要もないんじゃない?」
「いいからはやく!」
やれやれ、解ったよと電話を切りながら、あたしは内心わくわくしながら外出用の上着にそでを通した。
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