君という女性。

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*** 「開けていいよ」 暫くして心さんが車椅子を止めた。 いい匂いがする。 俺はゆっくりと目を開ける。 「これは……」 目を開けるとまるで別世界のようだ。 綺麗な花が咲き乱れ、チラチラと舞っている。 「梅の花よ。 昨日たまたま見つけたの」 心さんは木を見上げた。 「綺麗だな」 梅の花と合わさり、心さんが綺麗に見えた。 「そうね」 ふわりと心さんの髪が風で揺れる。 梅の花……。 何だか凄く懐かしい……。 「うっ……」 頭が痛い……。 俺は何か大事な事忘れているんじゃないだろうか……。 「勇助っ!」 心さんが俺の背中をさする。 ……何だか癒される。 「ごめん。 何か頭痛くて……」 痛む頭を抱え、俺は顔をあげた。 額にはびっしり汗が滲み出ている。 「ううん。 あたしの事は気にしないで。 それより部屋に戻って休もう」 そう言って心さんは優しく笑った。 「……あぁ。 そうだな」 心さんの笑顔に癒されながら俺は心さんに押してもらい病室へ戻って行った。
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