君という女性。

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*** 俺は梅の花を見ている。 これは、病院の梅の花じゃない。 この懐かしい感じは……。 「勇助」 誰かが俺の名前を呼ぶ。 「心!」 振り返るとそこには心さんがいた。 今と少し感じが違う。 「やっぱりここにいたんだね」 心さんは俺に優しく笑いかける。 この笑顔……。 間違いなく心さんだ。 「あぁ。 何だか名残惜しくてな」 名残惜しい……。 何言ってるんだ、俺は……。 でもこの梅の木、見た事ある。 この施設も……。 あっ……。 幼い頃、おじさん……いや、園長先生に手を引かれやって来た時に見たんだ。 ここは孤児院。 俺の第二の家。 「残酷な話よね。 社会人になったらここにいられないんだもん」 心さんは寂しげに笑う。 社会人? あぁ。 俺はここから巣立つのか……。 「仕方ないさ。 いつまでもここにいられない。 子供のままじゃいれないんだからな」 「でも不思議よね。 出会った頃はあたしが先にいたのに出て行くのは勇助が先だもんね」 そう言って心さんは梅の木にそっと触れた。 出会った頃……。 そうだ。 俺は心さんとこの施設で出会ったんだ。 そして仲良くなった。 まるで兄妹のように……。 いや、それ以上だったかもしれない。 「俺が一つ上だからな。 心が飛び級するか俺がダブれば一緒だったのにな」 心さんより一つ上……。 だんだん思い出してきたぞ。 「あはっ。 そうだね」 心さんは俺の発言に目を細めた。 「ここに来て色々あったな……」 しみじみと俺はこのお城のような見た目の施設を眺める。 「そうそう。 勇助ったらあたしの言葉をそのまま返すばかりで中々心を開いてくれなかったもの」 思い出しながら心さんは言う。 確かにそうだった。 心さんと出会った頃は会話という会話をろくろくした事なかったなぁ。 「仕方ないだろ。 事故で一気に両親亡くして親戚中たらい回しにされた挙句辿りついたのがここだったんだから」 俺がここに来た経緯……。 そうだ……。 家族旅行中に車で事故にあって俺だけ助かったんだ。 父さんも母さんもお姉ちゃんも……。 みんなみんないなくなった……。 両親の仕事が忙しくて行く事が出来なかった家族旅行。 やっと念願の家族旅行に行けたのに、結末は最悪だった。 何故俺一人生き残ったんだろうと、当時後悔ばかりしていた。
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