君という女性。

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「……ん」 頭がクラクラする。 そんな中、俺は重いまぶたをゆっくりと開いた。 白い天井がやけに目に染みる。 「気がついた?」 俺の顔を一人の女性が覗き込む。 茶色の長い髪、小柄で華奢な体は抱きしめたら折れそうだ。 全てを吸い込みそうな澄んだ瞳は泣き腫らしたのか目が真っ赤だ。 この人は誰だ? ……思い出せない。 「…………」 俺は彼女を見つめる。 「あ、あたし、看護師さん呼んで来るね」 顔を赤らめ彼女は部屋を出た。 看護師さん? ……という事は、ここは病院? ズキン…… 痛む右腕を見るとギプスで固定されている。 俺は怪我しているのか? 体を触ると管やら点滴やら付けられている。 何故こんな事に……。 俺が考え込んでいると白衣を着た男……医者がやってきた。 「気が付いたかい?」 若い医者は俺に声をかけてきた。 「……俺、どうしてここに?」 混乱する中やっと言葉が出た。 「列車の脱線事故があって巻き込まれてしまったんだよ」 医者は気の毒そうに言う。 「列車? 事故?」 ますます俺の記憶は混乱する。 そんな俺を見て医者は首を傾げ、体のあちこちを見てまわる。 「……名前、わかるかい?」 医者は俺に尋ねた。
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