君という女性。

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*** ここは何処だ? 何だか見覚えがある。 懐かしいような、胸が締め付けられるような……。 俺の目の前に現れたこのお城みたいな建物は一体なんだ? 「さぁ、今日からここが君のお家だよ」 俺の頭上から男の声がした。 手を握る感触にハッとし、上を見上げる。 「…………」 見えない。 この男の顔がハッキリと見えない。 モヤが掛かっている。 何故だ。 何故見えない。 「こんにちわ」 男の顔を見上げている俺に女の子が声を掛けてきた。 肩まで長い髪を赤いリボンで束ねたおしゃまな子だ。 綺麗な瞳をしている。 まるで汚れを知らない感じだ。 でも彼女とは何処かで会ったような……懐かしいような、何か不思議な気分だ。 「……こんにちわ」 恐る恐る俺は挨拶を返す。 自慢ではないが俺は人見知りな性格……だったような気がする。 「初めまして。 あたし、心。 浅野 心(あさの こころ)。 君は?」 心と名乗った少女は俺に笑いかけてくれた。 その笑顔はまるで天使のようだ、 俺の名前……? 俺の名前は……。 「俺、佐久間 勇助(さくま ゆうすけ)」 思い出した。 俺は『佐久間 勇助』だ。
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