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「勇助君か。
よろしくね」
心という少女は俺に手を差し出し、握手の催促をしてきた。
「よろしく」
怖ず怖ずと俺は手を出す。
そんな俺の手を引き寄せ心はギュッと握った。
「ねぇ、勇助くん。
こっちに来て」
俺の手を握ったまま心は走り出した。
「ちょっとやめてよ、心ちゃん!」
心の手を振り払おうとするが、意外にも力強く解けない。
「いいからいいから!」
俺は心に手を引かれながら半ば強引に心と一緒に走り出した。
***
「これは……」
少女につれて来られて俺はある場所に来ていた。
「梅の花だよ。
綺麗でしょ?」
そう言って少女は目を細めた。
見上げた目線の先には綺麗な梅の花が咲き乱れていた。
「綺麗だね……」
綺麗さに俺は思わず見とれてしまった。
まるで、全てを癒してくれているようだった。
「あたしね、ママに捨てられたの。
あたしは要らない子だって言ってママはあたしをここに連れてきたの」
梅の花を見ながら少女は寂しげに語りはじめた。
「……え?」
俺は思わず少女を見た。
梅の花を見上げる少女の綺麗な瞳からツーッと一筋の涙が流れ落ちた。
その涙は光にあたりキラリと光った。
「ちょうど今くらいの時期でね。
その時にこの梅の花とであって勇気をもらったの」
涙を拭い少女は言う。
そしてそっと梅の花に触れ匂いをかいだ。
「そうなんだ……」
少女にかける言葉が見つからず、俺は困惑した。
「勇助君」
少女は優しい声で俺の名前を呼んだ。
「ん?」
「今日から家族だからね。
遠慮はいらないよ」
「ありがと、心ちゃん」
「ねぇ」
「なぁに?」
「手を繋いでもいいかな?」
「うん」
「……また何年か先もこうやって二人で見れたらいいね」
「そうだね」
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